Joel on Software

Joel on Software

Joel on Software

名著。特にある程度経験を積んだプログラマや,ソフトウェア開発のチームリーダ,マネージャにおすすめ。彼の長年の経験からくる,ソフトウェア開発者にとってのプラクティスが詰め込まれている。一読ではなく二読,三読の価値がある。

これはプログラマ自身による,プログラマの言葉で(ジョーク交じりに)書かれた,プログラマのための本であり,そしてプログラミングの本ではない。もう一つ上のレベルの視点について,すなわちソフトウェア開発のマネジメントについて書かれた本だ。なに?そのメソドロジは反復型の開発モデルやCRCカードを使ったり,どれくらいエクストリームでアジャイルなのか,だって?残念ながらそういうことは載っていない。ここに書かれているのはもっと基本的なことで,「あなた」が日々の仕事に必要な考え方やプラクティスなんだ。だから一人で読んで今すぐに始められるようなこと(例えばデイリービルドやソフトウェアスケジュールのやりかた)も書いてある。他にも,生産性をあげるための話や,ソフトウェアのデザインにおいて何が重要で何が重要でないか,という雑多な話題が経験に基づいてユーモアたっぷりに描かれている。そのほとんどは彼自身が実証済みのことで,確かにそうだと頷けるのだ。

話の内容の素晴らしさもさることながら,話の書き方にも一読の価値がある。彼の文章は決して名文ではないが,読みやすく,分かりやすく,面白い。具体例が多く,たとえ話が多く,ジョークが多いのだ。面白い文章。面白いプレゼン。これはソフトウェア技術者にとって必要な能力だ。ブルーカラーのカンファレンスにいけば世界最高のソフトウェア技術者のスピーチを聞くことができる(最近では家にいながらでも見る/聞くことができる - 例えば YAPC::Asia 2006 Tokyo (Japanese))が,彼らのスピーチやプレゼンは総じて面白い。彼らには人を惹きつける魅力があるのだ。Joelの書き方にも学ぶところは多い。

なお,この本の中身は単に彼のブログ Joel on Software (日本語訳:ジョエル・オン・ソフトウェア)の記事の寄せ集めに過ぎない。まずはこれらのWebサイトを読んでみて,役に立ちそうだと感じたら購入して手元に置いておくとよいだろう。