量子コンピュータとは何か
- 作者: ジョージ・ジョンソン,水谷淳
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/11/25
- メディア: 単行本
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知り合いが「量子コンピュータをやりたい!」と言いながら大学院に進むらしく,気のなったので手にとってみました。
率直に感想を述べると,コンピュータ科学を専攻している僕には物足りませんでした。量子コンピュータは素人ですが,文系程度の量子論の知識はありますし,量子コンピュータを作る一つの手法である核磁気共鳴(NMR)程度なら基本的原理を知っています。コンピュータ科学を専門としていれば知っていることが半分程度で,量子コンピュータやそのアルゴリズムについてはそれほど詳しい説明もなく,また夢を見せてくれそうで,見せてくれない本でした。
本書はコンピュータ科学に詳しくない方向けの量子コンピュータの入門書です(この本を最も楽しく読めるのは,コンピュータ科学を専攻する学部1〜2年生だと思います。そんなみなさんにはお薦めです)。丁寧に書いてありますし,重要なトピックのみを選んで不必要なことはほとんど書かれていません。量子コンピュータや量子暗号通信がどのようなものなのか,そして現在どこまで開発が進められているのか,ということが分かります。
ただ,一つ理解したことがあります。
それは量子コンピュータはわれわれの生活にとってそれほど重要ではないということです――量子コンピュータはとてつもなく速いが単なるコンピュータに過ぎず,ソフトウェア工学のための銀の弾丸にはなりえない――という意味において。喜ばしいことに,ソフトウェア技術者の職は増えるばかりでしょう。